前回ブログで「フェルマーの最終定理」のことに少しだけふれたが、あまりに面白い本なので、ちょっと紹介。ちなみにタイトルのとっつきにくさと裏腹に、この本は非常に分かりやすく書かれている。素人が読んでも十分理解できるよう配慮され、難しい公式などはほとんど出てこない。
この本は、フェルマーの最終定理(後述)という悪魔の命題に振り回された人たち、あるいはその悪魔に果敢にも挑んだ数学者たちの、300年以上にもわたる苦難の歴史と数奇な運命について書かれた本である。
ところで、まずはこちらの図形問題を見てほしい。これは数年前に当社の採用試験で実際に出した問題である。中学生で習ったことを覚えている人なら、答えを出すのに5秒とかからないだろう。
これはピタゴラスの定理を使えばすぐに解ける。答えは50平方cmである。
なぜ今さらこんな問題を載せたのかというと、実はフェルマーの最終定理と大いに関係あるからだ。ピタゴラスの定理は有名なので覚えている人は多いだろうが、念のためおさらいすると、
「直角三角形の斜辺の長さを c とし、その他の辺の長さを a, b とした時
a2 + b2 = c2
が成立する」
そして実は、この条件を満たす整数解は無数にあることが分かっている。(整数解とは、例えばa=3,b=4,c=5の場合など。このときは、 32 + 42 = 52 が成立する。)
では、それぞれを2乗ではなく3乗したらどうなるのだろう??あるいは4乗したら?この疑問について、フェルマーという数学者が300年以上も昔にこう唱えた。
「3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせが存在しない」
つまりフェルマーは、例えばx3 + y3 = z3 のような式は成立しない、それだけでなく、3乗を4乗にしても、あるいは5乗、6乗・・・とどこまでやっても、この公式は同様に成立しない、と言っているのだ。2乗では無数の解が成立するのに、3乗になるととたんに成立しなくなる。しかも、4乗以上でも一切成立しないというこの発見は、多くの数学者たちにとっても、とても興味深いものであった。
しかもフェルマーは、こうも述べている。
「この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」
なんとフェルマーは、定理を発見したといいながら、その証明を公開しようとはしなかった。
そこでこの、一見単純そうで興味深い定理を証明しようと、多くの数学者が挑むことになる。しかし数多の優秀な数学者たちが挑んでは消えた。この定理の面白いのは、定理の意味そのものは中学生でも理解できるところだ。フェルマーの最終定理には、やがて多額の懸賞までかけられたが、真の答えを見つける者は現れなかった。
(参考まで、フェルマーの死後100年たって、ようやくn=3が正しいことが証明された。200年後には、n=7の解が証明されている。)
しかし、1993年、ついにその時が訪れる。 イギリス出身のワイルズという天才数学者が、ほとんどたった一人でこの定理を証明してみせたのだ。ちなみに近年の数学はあまりに高度化していて、通常は独力で新しい証明がなされることはなくなっている。アイデア段階から数学者同士で情報交換を続け、思考過程に誤りがないことを確認しながら、一つの証明が形成されてゆくのが普通である。にもかかわらずワイルズは、他の数学者たちとの交流を避け、誰にも知られぬように細心の注意を払いながら、一人で研究を続けたのだった。
“ワイルズという数学者が、フェルマーの定理を証明できたらしい!”
そのニュースは数学界だけでなく、世界中の人々に驚きをもって迎えられた。「ようやく300年の歴史に終止符が打たれる。」誰もがそう考えていた。しかしその後、ワイルズには苦難に満ちた日々が訪れることになる。そして最後に彼が手にしたものは何だったのか?
興味ある人にはぜひ読んでほしいと思う。
ところで、ワイルズがフェルマーの定理の証明を発表した当時、ニューヨークの地下鉄にはこんな落書きが現れたそうだ。
xn+yn=zn この方程式に解はない。 私はこれについて真に驚くべき証明を発見したが、 |

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